依頼者に起きるメンタルの不調とは?

性的な暴力の被害から来るメンタルの不調は?

1.性的な暴力とは?

性的な暴力は、レイプ、痴漢(ちかん)、セクハラなどが有名ですが、それ以外にも「あなた」が望まない性的な行為は性的な暴力といえます。

また、性的な暴力の被害者は、性別も年齢などを問いませんので、女性・男性・LGBTQから、小学生・中学生・高校生・大学生・社会人まで、色々な方が被害者になる可能性があります。加害者も同じで、見知らぬ人や職場の人だけでなく、身近な人や夫婦・恋人など色々な方がなる可能性があります。

2.性的な暴力を受けたときのメンタル不調とは?

性暴力を受けている「そのとき」は、ツラい・気持ち悪い・イヤだ……他にも色々な不快な気持ちを感じると思います。それに加えて、性暴力を「受けたあと」も、妊娠していないか・エイズなどの性病になっていないか・周りからどう思われるのか……他にも色々な不安を感じると思います。

そして、このように性暴力を受けることで、次のようなメンタル不調になることがあります。

①性的な暴力を思い出す場所、人、物を無意識に避ける
②性的な暴力を突然思い出してしまう
③話の最中に声がぼんやり遠くから聞こえる・なぜか寝てしまう・なぜか笑顔になっている
④身体を動かすとすぐに疲れて1日中寝てしまう、入浴や着替え、食事がめんどくさい
⑤生きていても意味がないと思う、知らぬ間に道路に飛び出していた
⑥被害を受けた時に痛かった部分が突然また痛くなる
⑦いつもよりお酒を飲みすぎる・食べ過ぎる
⑧自分から性的な行為に誘ったと思って自分を責めてしまう
⑨相談した人から不注意だと言われて思い当たるように感じた
⑩性的な暴力を振るわれたのに何も出来なかった自分が恥ずかしい
⑪早く身体を洗ってきれいにしたいと思って何度も身体を洗う

※参考文献:小西聖子編『犯罪被害者のメンタルヘルス』( 誠信書房、2008)153頁~158頁

DVの被害から来るメンタルの不調は?

1.DVとは?

「DV」とは、英語で「ドメスティック・バイオレンス」のことです。そのまま翻訳すると「家庭内暴力」となりますが、「DV」の正しい意味は「親しい関係にある人からの暴力」です。日本では「家庭内暴力」を「親子間での暴力」に限定してきた歴史がありますので、「DV」の正しい意味とは違う意味になってしまうために、「家庭内暴力」とは言わずに、そのまま「DV」と呼ぶようになりました。

そして、平成13年(2001年)に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律(DV防止法、配偶者暴力防止法)」が施行されたのが、「DV」という言葉は世間一般にもよく知られるようになったきっかけの一つです。

2.何が「DV」になるの?

「DV」になる暴力は、殴る・蹴るといった身体に向けられた暴力だけではありません。人格を否定する言葉や大声で怒鳴ること、物を壊して脅すこと、無視し続けることなどのメンタルに向けられた暴力も「DV」になります。それだけでなく、生活費を渡さないことや借金をさせられることなどの経済的な暴力やレイプや痴漢などの性的な暴力も「DV」になります。

3.「DV」を受けたときのメンタル不調とは?

こうした「DV」は身体とメンタルに大きな被害をもたらします。それにもかかわらず、「DV」は「親しい関係」の中で行われる暴力ですので、なかなか他の人に相談することができず、相談ができない間にどんどん被害が拡大していくという特徴があります。

被害が深刻化して生じるメンタル不調として、以下のようなものがあります。

・集中力がなくなった
・自分に責任があると強く感じるようになった
・いつも何かに怯えている感覚がある
・眠れない、寝ても悪夢で目が覚める
・死にたい、消えたいと思う
・身体が鉛のように重たい
・何をするにも億劫
・イライラしやすい

以上のような「いつもとは異なる行動や精神状態」がみられたら対策が必要です。

より深刻化すると、「うつ病」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」といった精神障害(病気)になることがあります。「DV」で被害を受けたことはメンタルに深い傷を負わせることになるため、メンタル面での後遺症のようにして精神障害になることがあります。

その他にも、

・ストレスからむちゃ食いを繰り返したり、逆に何も食べられなくなる摂食障害
・アルコールや薬物の乱用
・不安障害

などが発症する可能性があります。

できるだけ被害やメンタル不調が小さいうちに、弁護士、警察や都道府県などが運営する福祉事務所などの外部の人にヘルプを出すことが重要です。

4.「DV」の相談は勇気を持ってお早めに!

「DV」の被害を受けても、「DV」を受けている方は外にヘルプを求めにくいとされています。それは、加害者から「外でこのことを言ったら殺す」と脅されたり、「別れたら死んでやる」と罪の意識を刷り込まされているからです。また、お子さんが居れば、お子さんの将来を考えて「自分が離婚や別居を我慢すれば……」と耐えている方もいらっしゃると思います。

上記の理由から、なかなかDVの相談はしづらいものです。しかし、DVを受け続けることは、ご自身のためにもお子さんのためにも良くありません。自分がDVを受けていることに気づいたら、一刻も早く対策をとってください。DVの被害にあった人は、弁護士、警察や福祉事務所(行政機関)等からの支援を受けることができます。また、繰り返し述べるようにDVからくるメンタル精神不調は、長引けば長引くほど症状が悪化しますので、カウンセリングを受けて早い段階で症状を軽減することも大切です。

被害者の遺族のメンタルの不調は?

交通事故や殺人事件などが生じたとき、被害者の遺族がメンタル不調になることがあります。メンタル不調の種類は色々ありますが、例えば、次のような不調が被害者の遺族特有のメンタル不調として考えられています。

①親しい人が亡くなったことを認めたくない・認められない。
②家族のことが頭から離れず眠れなくなる・食欲が無くなる
③家族がなくなってから、ゆううつな感覚になる・悪夢を見るようになる
④孤独感
⑤亡くなった方のことを考えてばかりで仕事や用事ができない
⑥周囲の人が信じられなくなる
⑦外に出れずに引きこもるようになってしまう
⑧家族が傷つき苦しんだ身体の部位と同じ部位に痛みを感じる
⑨どのような被害を受けてもなる可能性がある「うつ病」や「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」になる可能性がある。

以上のように、被害者の方が亡くなった場合には、その被害者の遺族の方々も多くのメンタル不調を抱える可能性があります。

さらに、被害者が亡くなったこと以外にも、「被害者の方に関する裁判による長期間のストレス」や「周囲からの心無い言葉・行動による二次被害」によって、メンタル不調になることがあります。

※参考文献:小西聖子編『犯罪被害者のメンタルヘルス』( 誠信書房、2008)126頁~131頁

裁判のときになりがちなメンタル不調は?

裁判や和解、示談などの司法手続きを行う場合にもメンタル不調に陥りやすいです。これは司法手続きが長期間続くことが多いので、ストレスを長期間受け続けることになる等の理由があります。

また、被害に直面することがある等のメンタル不調になる場面が様々あります。例えば、次のような場面があります。

①事件の状況や加害者の言い分が書かれている文書だと思うと、動揺してしまい、読むことができない。
②裁判所に行かないといけないとき、加害者に会うかもしれないと考えると、吐き気や目まいで動けない。
③訴訟手続きの中で加害者の言い分や加害者側の弁護士の言動で傷つくこと等を考えると、恐怖心でいっぱいになってしまう。
④弁護士への相談のときに、被害状況を話すのが辛くて相談が中断する・話しているうちに怒りが高まりすぎてしまい、つい弁護士に当たってしまう。
⑤自分で決断をしなければならないのに、気持ちがいっぱいになって何も決められない。
⑥被害の影響で人間不信になった場合、弁護士も信じられなくなる。

その他にも、色々な場面でメンタルが不安定になったり、強いストレスを感じたりすることがあります。

※参考文献:小西聖子編『犯罪被害者のメンタルヘルス』( 誠信書房、2008)374頁~380頁